自閉症児の問題行動を減らしたいと考える保護者は多いでしょう。泣く、叫ぶ、叩く、物を投げる、逃げる、自傷する、床に寝転ぶ、こだわりで動けなくなる。こうした行動が続くと、家庭生活は大きく疲弊します。園や学校でも、集団参加が難しくなり、周囲との関係に悩むことがあります。
しかし、問題行動を減らすときに大切なのは、単に行動を止めることではありません。もちろん、危険な行動はすぐに止める必要があります。自傷や他害、飛び出し、物を壊す行動は、安全確保が最優先です。しかし、止めるだけでは、子どもがなぜその行動をしているのかという問題は残ります。
問題行動は、子どもにとって何かの役割を持っていることがあります。嫌なことから逃げる、欲しいものを得る、助けを求める、注目を得る、感覚を調整する、予測できない不安を表す。もしそうなら、その行動をなくすだけでは不十分です。同じ目的を、もっと安全で伝わりやすい方法で達成できるようにする必要があります。
問題行動は「困った伝え方」かもしれない
自閉症児の問題行動は、大人にとって困った行動です。しかし、子ども側から見ると、それは困りごとを伝える手段になっている場合があります。
たとえば、課題が難しくてできないときに、子どもがプリントを破るとします。大人から見れば問題行動です。しかし、子どもにとっては「わからない」「もう無理」「手伝って」「やめたい」を表しているのかもしれません。
お風呂に入る前に毎回泣く子もいます。わがままではなく、服を脱ぐ感覚が嫌なのかもしれません。浴室の音が響いてつらいのかもしれません。次に何が起こるかわからないのかもしれません。眠くて限界なのかもしれません。
言葉で伝えられない子どもは、行動で伝えるしかありません。問題行動を減らすには、行動を罰するより先に、何を伝えようとしているのかを読み取る必要があります。
代替コミュニケーションを教える
問題行動を減らす中心になるのが、代替コミュニケーションです。これは、問題行動の代わりに、同じ目的を伝えられる方法を教えることです。
たとえば、泣いて休憩を求めている子には、「休憩」を教えます。音声で言えないなら、休憩カードを渡す、休憩場所を指さす、身振りをする方法でも構いません。叩いて物を要求している子には、「ちょうだい」「貸して」を教えます。逃げて苦手な場面から離れている子には、「いや」「やめて」「少し休む」を教えます。課題が難しくて物を投げる子には、「手伝って」「わからない」を教えます。
重要なのは、代わりの伝え方が問題行動より使いやすいことです。叩けばすぐ物が手に入るのに、カードを出しても大人が気づかないなら、子どもはカードを使いません。泣けば休めるのに、「休憩」と言っても休ませてもらえないなら、休憩の伝え方は育ちません。
代替コミュニケーションを教えるときは、子どもが使ったらすぐに結果が返るようにします。最初は大人が手助けして構いません。問題行動が出る前に、使える形で教えることが大切です。
休憩を教えることは逃げを許すことではない
問題行動支援でよくある心配に、「休憩を認めると、嫌なことから逃げる癖がつくのではないか」というものがあります。たしかに、すべての要求をそのまま通してしまえば、生活上の課題に取り組みにくくなる場合もあります。
しかし、自閉症児に休憩を教えることは、単なる逃げを許すことではありません。崩れる前に自分の状態を伝える力を育てることです。
休憩を求められない子は、限界になるまで頑張り、最後に大きく崩れることがあります。泣く、叩く、逃げる、自傷するという形になってから対応するより、早めに「休みたい」と伝えられる方が安全です。
もちろん、休憩の使い方にはルールが必要です。休憩したら戻る、短い休憩から始める、終わりを見せる、課題量を調整するなどです。休憩を使いながら、少しずつ参加できる時間を広げます。
休憩は、活動から逃げるためだけのものではなく、活動に戻るための調整手段です。
環境を変えないと問題行動は減りにくい
代わりの伝え方を教えることは重要ですが、それだけでは十分でない場合もあります。問題行動を起こしやすい環境がそのままなら、子どもは何度も限界に追い込まれます。
たとえば、音がつらい子を騒がしい場所に長時間置いたままにして、耳をふさぐ行動や逃げる行動だけを減らそうとしても難しいでしょう。予定変更が苦手な子に何の予告もなく変更を重ね、泣かないように求めても負担が大きすぎます。課題が難しすぎる子に同じ量を出し続けて、投げないように求めても、問題は残ります。
問題行動を減らすには、環境調整が必要です。刺激を減らす、予定を見せる、課題を小さく分ける、終わりを明確にする、選択肢を作る、休憩場所を用意する。こうした支援によって、問題行動が起きる条件そのものを減らします。
行動を変えることと環境を変えることは、対立しません。子どもに新しい伝え方を教えながら、子どもが使いやすい環境を整えることが必要です。
問題行動の後だけ反応しない
問題行動が続いている場合、大人の反応のタイミングも見直す必要があります。問題行動が起きた後だけ大人が強く反応し、適切な発信には気づいていない場合、子どもは問題行動でしか周囲を動かせないと学んでしまうことがあります。
たとえば、子どもが小さな声で「いや」と言ったときには大人が無視し、泣き出したら初めて対応する。手を伸ばしたときには気づかず、叫んだら欲しい物を渡す。落ち着いて待っているときには何も言わず、逃げたら大人が追いかける。こうしたことが繰り返されると、問題行動の方が強くなります。
大切なのは、問題行動が出る前の小さな適切行動に反応することです。見る、指さす、カードに触る、短く声を出す、少し待つ、手を引かずに近づく。こうした小さな発信を見つけ、すぐに意味のある結果を返します。
問題行動を減らすには、問題行動を叱るだけでなく、適切な行動を育てる必要があります。
「叱らない」と「何でも許す」は違う
問題行動への支援で、「叱らない方がよい」と言うと、「では何でも許すのか」と誤解されることがあります。しかし、叱らないことと、何でも許すことは違います。
危険な行動は止めます。他者を叩くこと、物を投げて壊すこと、道路へ飛び出すこと、自傷することは、安全のために止める必要があります。ただし、そのときに怒鳴ったり、長く説教したり、恐怖で従わせたりすることが支援ではないということです。
安全を確保し、言葉を短くし、環境を整え、落ち着いたあとに代わりの行動を教える。これが療育的な対応です。
また、子どもの要求をすべて通す必要もありません。お菓子を際限なく食べたい、夜中まで動画を見たい、危険な場所へ行きたいという要求は、そのまま通せません。その場合でも、拒否を伝えられるようにし、見通しを示し、代替活動を用意し、短い言葉で一貫して対応することが大切です。
家庭で問題行動支援を始めるなら一つに絞る
家庭では、問題行動がいくつもあるように見えることがあります。朝の支度で泣く、食事で逃げる、動画を終えると怒る、きょうだいを叩く、外出先で走る。これらを一度に変えようとすると、親も子どもも疲れてしまいます。
まずは、一つの場面を選びます。頻度が高いもの、安全に関わるもの、家庭の負担が大きいものから選ぶとよいでしょう。その場面について、前に何があるか、行動のあとに何が起きているか、どのような伝え方が不足しているかを考えます。
次に、予防策と代替行動を一つずつ入れます。動画なら、終わりの予告と「もう一回」「終わり」の伝え方。食事なら、苦手な感覚の確認と「いらない」の伝え方。外出なら、予定表と休憩場所。きょうだいを叩くなら、距離の調整と「貸して」「やめて」の伝え方。
小さく始め、うまくいったことを続けることが大切です。家庭で完璧な行動分析をする必要はありません。一場面を丁寧に見るだけでも、問題行動への対応は変わります。
全国どこからでも問題行動を減らす支援を学ぶ
自閉症児の問題行動を減らすには、行動を止めるだけでは不十分です。その行動が何を伝えているのかを見て、代わりの伝え方を教え、環境を整える必要があります。休憩、要求、拒否、手伝って、終わりを伝えられるようにすることが、問題行動を使わなくても済む生活につながります。
ユアーズでは、全国どこからでも参加できる形で、自閉症児の問題行動を療育的に理解し、家庭で対応する方法を学べます。ABAの考え方、視覚支援、感覚調整、代替コミュニケーション、生活場面での実装を、発達段階に合わせて整理しています。
ステージ1〜3はこちら
https://yoor.jp/door/autism_approach123
ステージ4〜6はこちら
https://yoor.jp/door/autism_approach456

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