自閉症児が叩く・投げる・逃げるときー問題行動をABC分析で考える親向けガイド

自閉症児が人を叩く、物を投げる、急に逃げるといった行動をすると、家庭や園や学校では大きな問題になります。安全に関わるため、大人はすぐに止めなければなりません。特に、きょうだいを叩く、友だちを押す、物を壊す、道路へ飛び出そうとするような行動があると、保護者の負担は非常に大きくなります。

こうした行動は、周囲から「乱暴」「わがまま」「しつけができていない」と見られやすいものです。しかし、自閉症療育では、問題行動を性格の問題としてだけ見ません。もちろん、危険な行動は止める必要があります。しかし、止めるだけでは根本的な解決にならないことがあります。

大切なのは、その行動がなぜ起きているのか、どのような役割を持っているのかを考えることです。そのために使える基本的な考え方がABC分析です。ABC分析は専門的な方法ですが、家庭でも考え方の入口として使うことができます。

ABC分析とは何か

ABC分析のAはAntecedentで、行動の前に起きたことです。BはBehaviorで、行動そのものです。CはConsequenceで、行動の後に起きたことです。つまり、問題行動を「前、行動、後」の三つに分けて見る方法です。

たとえば、子どもが課題を出されると物を投げ、大人が課題を中断するとします。この場合、Aは課題を出されたこと、Bは物を投げたこと、Cは課題が中断されたことです。この流れが何度も続くと、物を投げる行動は、課題から逃れる手段になっている可能性があります。

別の例では、子どもが欲しい玩具を取れないときに大人を叩き、大人が驚いてその玩具を渡すとします。この場合、Aは玩具が取れないこと、Bは叩くこと、Cは玩具が手に入ることです。叩く行動が要求の手段になっているかもしれません。

ABC分析は、子どもを責めるためのものではありません。行動がどのような条件で起き、何によって続いているのかを見て、よりよい支援を考えるためのものです。

叩く行動にも複数の意味がある

同じ「叩く」という行動でも、意味は一つではありません。欲しいものを得るために叩く場合もあれば、嫌なことを避けるために叩く場合もあります。人が近づきすぎて嫌なときに叩くこともあります。注目してほしくて叩くこともあります。感覚的に興奮して、力の調整ができずに叩くこともあります。

意味が違えば、対応も変わります。欲しいものを得るために叩いているなら、「ちょうだい」「貸して」を教える必要があります。嫌なことを避けるためなら、「いや」「休憩」「やめて」を教える必要があります。近づきすぎが原因なら、人との距離や座席の配置を見直す必要があります。興奮しすぎているなら、活動の強さや休憩を調整する必要があります。

叩く行動だけを見て、同じ対応をするのでは不十分です。行動の機能を見なければ、叱っても繰り返されることがあります。

また、叩く行動が出る前のサインを見つけることも大切です。体が硬くなる、声が大きくなる、手が出そうになる、相手をじっと見る、物を取られそうになると緊張する。こうしたサインが見えたら、叩く前に支援を入れることができます。

物を投げる行動は何を伝えているのか

物を投げる行動も、家庭や園でよく問題になります。玩具を投げる、食器を投げる、課題の道具を投げる、椅子を倒す。危険があるため、周囲は強く反応しがちです。

物を投げる行動には、いくつかの背景があります。一つは、要求や拒否の表現です。嫌な課題を出されたときに投げるなら、課題を避けたいのかもしれません。欲しいものが得られないときに投げるなら、不満や要求を伝えているのかもしれません。

もう一つは、感覚的な要素です。投げたときの音、物が飛ぶ動き、落ちる感覚が刺激として強い場合もあります。特に、投げると大きな音がして大人が反応するなら、その一連の変化が子どもにとって強い刺激になっていることもあります。

対応するときは、まず安全を確保します。危険な物を手の届くところに置かない、投げても危なくない物に置き換える、投げる場所を制限することが必要な場合があります。その上で、投げる代わりに何をすればよいかを教えます。「いらない」は箱に入れる、「休憩」はカードで伝える、「終わり」は終わり箱に入れるなど、具体的な代替行動を作ります。

逃げる行動は安全面から優先して支援する

逃げる行動は、特に安全面で重要です。家庭内で部屋から出る、園で活動場所から離れる、学校で教室を飛び出す、外出先で走っていく、道路に出そうになる。こうした行動は、重大な事故につながる可能性があります。

逃げる行動も、単に「落ち着きがない」と見るのではなく、何から逃げているのか、どこへ行こうとしているのかを見ます。苦手な音から離れたいのか、難しい課題から逃れたいのか、好きな場所へ行きたいのか、活動の意味がわからず移動しているのか、身体を動かしたいのか。不安や感覚負荷が高すぎる場合もあります。

逃走がある場合は、まず安全対策が必要です。ドアの管理、見守り、外出時の手つなぎや位置取り、安全に待つ場所、名前や連絡先のわかるものなど、現実的な対策を行います。その上で、逃げなくても済む方法を教えます。

たとえば、「休憩」と伝えれば静かな場所へ行ける。「うるさい」と伝えればイヤーマフを使える。「終わり」と伝えれば活動が区切られる。「行きたい」と伝えれば順番を待って移動できる。こうした代替手段が必要です。

逃げる行動は、叱るだけではなく、安全確保と代替コミュニケーションをセットで考える必要があります。

行動の後に何が起きているかを見る

問題行動を理解するとき、行動の後に何が起きているかを見ることが非常に重要です。大人は、子どもの行動を止めようとして反応します。しかし、その反応が、結果的に行動を続きやすくしていることがあります。

たとえば、子どもが叫ぶたびに大人が好きな物を渡すと、叫ぶ行動は要求手段として強くなるかもしれません。子どもが物を投げるたびに課題がなくなると、物を投げる行動は課題回避の手段になるかもしれません。子どもが逃げるたびに大人が大騒ぎして追いかけると、その反応自体が子どもにとって強い刺激になることもあります。

もちろん、危険な行動にはすぐ対応しなければなりません。安全確保を優先します。しかし、落ち着いた後には、大人の反応が行動をどう変えているかを見直す必要があります。

特に、問題行動のあとだけ手厚く関わり、適切な発信にはあまり反応していない場合、子どもは問題行動でしか大人を動かせないと学んでしまうことがあります。適切な伝え方が出たときに、すぐ意味のある反応を返すことが大切です。

代わりの行動は簡単でなければならない

問題行動を減らすには、代わりの行動を教える必要があります。しかし、その代わりの行動は、子どもにとって簡単で、すぐ使えて、確実に伝わるものでなければなりません。

たとえば、叩く代わりに「貸して」と長い言葉を言わせようとしても、まだ言葉が難しい子には使えません。その場合は、カードを渡す、手を出す、指さす、短い音声で「かして」に近づけるなど、段階に合った方法が必要です。

逃げる代わりに「休憩させてください」と言わせるのが難しい子には、休憩カード、休憩場所を指さす、身振りで伝える方法が必要です。物を投げる代わりに「いらない」と伝えることが難しい子には、いらない箱に入れる、首を振る、カードを渡すなどの方法があります。

代替行動は、大人にとって理想的な形から始める必要はありません。子どもが今できる形で始め、少しずつ伝わりやすい形へ整えていきます。

家庭・園・学校で対応を共有する

問題行動への支援は、家庭、園、学校でバラバラだとうまくいきにくいことがあります。家庭では「休憩カード」を使っているのに園では使わない。園では予定表があるのに家庭ではない。学校では叱るだけで、代替行動を教えていない。こうなると、子どもは場面ごとに違う対応を受け、混乱しやすくなります。

支援方法は完全に同じである必要はありません。しかし、基本の考え方は共有した方がよいです。この子は何がきっかけで崩れやすいのか。叩く前にどんなサインがあるのか。休憩はどう伝えるのか。予定変更はどう見せるのか。落ち着く方法は何か。危険な行動が出たときはどう安全を確保するのか。

こうした情報を共有することで、問題行動への対応は一貫しやすくなります。保護者だけが調整役を背負うのではなく、支援者同士が協力することが必要です。

全国どこからでもABC分析と問題行動支援を学ぶ

自閉症児が叩く、投げる、逃げるとき、その行動を単なる乱暴やわがままとして見るのではなく、前に何があり、後に何が起きているのかを考えることが重要です。ABC分析を使うと、行動の役割が見えやすくなり、代わりに何を教えればよいかがわかります。

ユアーズでは、全国どこからでも参加できる形で、問題行動を療育的に理解する方法を学べます。要求、拒否、休憩、手伝ってを伝える支援、視覚的見通し、感覚調整、安全確保、家庭・園・学校での連携を、発達段階に合わせて整理しています。

ステージ1〜3はこちら
https://yoor.jp/door/autism_approach123

ステージ4〜6はこちら
https://yoor.jp/door/autism_approach456

コメント

タイトルとURLをコピーしました